10月9日、2027年1月放送のTVアニメ『気になってる人が男じゃなかった』(通称「きにおと」)の第1弾PVが公開され、ついに劇伴の担当者が明かされました。音楽は野間康介×佐々木“コジロー”貴之のふたり。しかもPVにはその劇伴がすでに使われていて、レコーディングは東京とLAで行われたといいます。オープニングにNirvana「Breed」を起用することが7月に発表されて以来、ずっと気になっていた「じゃあ、劇伴はどうなるの?」という問いに、ようやく答えが出ました。
「音楽そのもの」が主役の作品で、劇伴は何をするのか
原作は新井すみこさんがKADOKAWAのウェブ漫画サイト「キトラ」で連載している作品。洋楽ロック好きの女子高生・綾が、CDショップで働く「おにーさん」に惹かれていく。でもその正体は、同じ学校の地味なクラスメイト・美月だった──という、音楽の話を重ねることで距離が縮まっていく物語です。電撃オンラインによれば、原作は全世界累計225万部を突破しています。
この作品の面白さであり難しさは、作中に実在のロックの名曲が次々と登場すること。映画.comの報道では、Nirvanaの楽曲が日本の映像作品で正式に使われるのは今回が初めてだそうです。『Nevermind』(1991年)収録の「Breed」があのイントロで本編の幕を開けるとなると、劇伴は「本物のグランジ」と同じ番組の中で鳴ることになります。名曲の直後に流れる劇伴が薄っぺらければ一瞬でバレるし、名曲と張り合いすぎれば二人の会話の邪魔になる。普通のラブコメとは、要求されるものがまるで違います。
鍵盤とギター、ふたりの役割分担
アニプレックスの発表では、野間さんが「作曲・キーボード」、佐々木さんが「作曲・ギター」とクレジットされています。作曲家ふたりがそれぞれ自分の楽器を持ち込む形で、オーケストラ発想というよりバンドの“セッション”から生まれる劇伴になりそうな気配が濃厚です。
コメントもそれを裏付けています。野間さんは、本作が初めての劇伴制作であることを明かしたうえで、演奏は生々しく、どこか懐かしさのある音楽的セッションになったと振り返っています。佐々木さんは、自分が長年聴いてきたグランジロックの名曲が原作に登場していたことを喜び、登場人物の繊細な感情に寄り添う音楽になったと語っています。「グランジを長年聴いてきたギタリスト」が劇伴を書くこと自体、この作品にとってはいちばん説得力のあるキャスティングかもしれません。
なぜ“LA録音”なのか、を勝手に考える
LAで録った理由は公式には語られていませんが、ここからは筆者の想像です。90年代の米国ロックを愛するキャラクターたちの物語で、劇伴まで「あの空気」をまとわせたいなら、ミュージシャンも部屋鳴りも現地で揃えたくなるのは自然なこと。打ち込みで整えたサウンドではなく、アンプの前で鳴らした音の手触りこそが、CDショップの店先で交わされる会話の温度に合うはずです。
- 注目①:既存曲が流れたシーンから、劇伴へどう橋渡しするか(キーやテンポの“受け”方)
- 注目②:美月と綾、それぞれのテーマが鍵盤とギターのどちらに託されるか
- 注目③:サウンドトラック化されたとき、ロックアルバムとして聴けるかどうか
スタッフの布陣も“音”に寄っている
監督は『ホリミヤ』の石浜真史さん、シリーズ構成は山崎莉乃さん、キャラクターデザインは『【推しの子】』の平山寛菜さん、制作はCloverWorks。放送は2027年1月8日(金)から、日本テレビ系「フラアニ」枠で毎週金曜よる11時です。原作者の新井さんが「音楽を主軸にした作品をアニメという『音』で届けてもらえる」ことを光栄だと語っていたとおり、この作品の成否はかなりの部分を音楽が握っています。
ニルヴァーナが鳴り終わったあと、画面に残るのは二人の会話と、野間さんの鍵盤と佐々木さんのギター。初めて劇伴を手がける作曲家が、いきなり世界でいちばん有名なグランジバンドの“次”を任される──そんな痛快な挑戦が、1月の金曜深夜に始まります。PVの数十秒だけでも、ぜひ音に耳を澄ませてみてください。