ナイトシティに、また朝が来た。……いや、正確に言えば「昼」が来た。Netflixの『サイバーパンク: エッジランナーズ2』が本日10月20日から世界独占配信。そして同じ日に、Milan Recordsからサウンドトラックが2枚同時にデジタルリリースされる。米国の映画音楽ニュースサイトFilm Music Reporterが10月19日に収録曲を公開した。1枚は歌もの8曲のオリジナル・サウンドトラック、もう1枚が今回の主役、今堀恒雄による全39曲のスコア・アルバムだ。
2022年の第1作がサイバーパンク好きの外側にまで届いたのは、アニメとしての完成度はもちろん、音楽の力が大きかった。劇伴の山岡晃に、劇中で何度も流れた挿入歌の数々。あの“耳の記憶”があるからこそ、第2作で劇伴の名前が変わったことは、ファンにとってかなり大きなニュースだった。
今堀恒雄という人選の、妙な説得力
今堀恒雄と聞いてまず浮かぶのは、1998年の『TRIGUN』だろう。荒野を歩く赤いコートの男に、ギター1本で砂ぼこりと哀愁を同時に鳴らしたあのスコア。さらに『はじめの一歩』、『GUNGRAVE』。並べてみると、どれも「暴力と、その奥にある人間くささ」を描いた作品ばかりだ。しかも本人はジャズからプログレまで横断する、ジャパニーズ・フュージョン屈指のギタリストで、SEATBELTSのオリジナルメンバーとしても知られる。
制作発表時のスタッフを見ると、制作はTRIGGER、監督は五十嵐海、脚本はTRIGGER社長でもある大塚雅彦、オープニングの絵コンテは今石洋之。前作からの“続投”と“交代”が入り混じる布陣の中で、音楽は今堀恒雄にバトンが渡された。6月29日に公開された最初のトレーラーの時点で、すでに彼の音楽が使われていたという。
個人的にこの人選が面白いと思うのは、第2作の物語の構造だ。前作はデイビッドという一人の少年を追う物語だったが、今作は4人の主人公による群像劇。クランを壊滅させた犯人に復讐を誓うスネーク族出身のネットランナー「D」、ブレインダンスが流行する街で“真実のフィルム”を追う映画好きの少年ロマン・クラックス、メイルストロームに属する少女タリア、そしてサイバーサイコシスでクロームを失った、かつて「キング」と呼ばれた初老のエッジランナー、ウィーク・キングスリー。舞台も夜ではなく“昼のナイトシティ”だという。ひとつのテーマで押し切るより、キャラクターごとに温度の違う音を鳴らし分けられる作曲家──この条件に、ジャンルを渡り歩いてきたギタリストはぴったりはまる。
39曲のタイトルを、先に“読んで”みる
配信開始前なので、ここではまず曲名から読み解いてみたい。冒頭は「Welcome Back to Night City」。もう、これだけでずるい。前作を観た人に向けた「おかえり」であり、同時に新しい4人にとっては“地獄へようこそ”でもある。
中盤で目を引くのは「Samba de Santo Domingo」。サントドミンゴはナイトシティの地区の名前で、そこに「サンバ」を掛け合わせてくるあたり、今堀らしいラテン/フュージョンの引き出しが開いていそうでワクワクする。一方で「Analog Solitude」「Digital Ghost」「Digital Parasite」といった“アナログ/デジタル”の対比を感じさせる曲名もあり、生身とクロームのあいだで揺れるこの作品のテーマを、音色でも描き分けようとしているように見える。
- 序盤:「Welcome Back to Night City」「Zero Warning」「Street Psycho」──帰還と、いきなりの不穏
- 中盤:「Samba de Santo Domingo」「When We Met」「Dusk Over the Neon」「Rusty Smile」──街の色と、人の出会い
- 終盤:「Vengeance」「Bittersweet Neon」「No Future, No Past」「Leaving the City」──復讐と、街を去るということ
ラストが「Leaving the City」で終わるのも示唆的だ。前作のあの結末を思い出すと、“街を出る”という言葉が持つ重さは半端じゃない。もちろん曲名だけで物語は分からないし、ネタバレを推測する気もない。ただ、39曲の並びに「始まり→出会い→喪失→出発」という弧がちゃんと見えるのは、スコア盤としてかなり期待が持てるポイントだ。
歌もの盤は“多国籍”、スコア盤は“ひとりのギタリスト”
もう1枚の歌もの8曲も面白い。7月1日に先行配信されたRico Nastyの「You Can't Run From Me」をはじめ、Petite Meller、ポーランド語タイトルの曲を歌うPiernikowski、Biji、Doudou、Corbinと、国も言語もばらばら。ポーランド発のゲームを原作に、日本のスタジオがアニメ化し、米国のレーベルから世界同時に出る──この作品らしい、文字どおりの“多国籍サウンド”だ。
そのぶん、スコア盤に通る一本の線がはっきりする。いろんな声が飛び交う街を、ひとりのギタリストが39曲でつないでいく。前作の山岡晃サウンドの記憶を引き継ぐのか、それともまったく違う手触りでナイトシティを塗り替えるのか。答えは本編とアルバムの両方で、今日から確かめられる。まずは1話を観て、それから「Welcome Back to Night City」をもう一度。きっと、聴こえ方が変わるはずだ。