ストップモーション・アニメーションの工房LAIKAの最新長編『Wildwood(原題)』のサウンドトラックが、米国での劇場公開と同じ10月23日にDecca Recordsからデジタル配信されます。スコアを書いたのは、『つぐない』でアカデミー賞作曲賞を受賞したダリオ・マリアネッリ。そしてラストを締めくくるのは、原作者コリン・メロイ本人がフロントマンを務めるバンド、ザ・ディセンバリスツの新曲「The Better Part of Bravery」です。CDと2枚組アナログ盤も、配信に続いて数週間のうちに出る予定と報じられています。

正直、このニュースを見て最初に思ったのは「またマリアネッリとLAIKAか、最高じゃん」でした。この組み合わせ、実はもう3度目なんです。

『ボックストロール』『KUBO』、そして『Wildwood』──積み重ねた3本目

マリアネッリは、LAIKAの『ボックストロール』と『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』をすでに手がけています。さらに監督のトラヴィス・ナイトとは、実写の『バンブルビー』でも組んでいる。つまり今回の『Wildwood』は、ナイト監督とマリアネッリにとってはLAIKA作品で2本目、実写を含めると3本目のタッグ。Film Music Reporterが「マリアネッリが『Wildwood』を担当」と報じたのは2022年5月なので、発表からおよそ4年半をかけて、ようやく音が世に出ることになります。

ストップモーションは、1秒の映像のために人形を何十回も動かして撮る、気の遠くなるような手仕事です。制作期間が長くなるのは当たり前で、作曲家もその時間の流れに付き合うことになる。マリアネッリ本人は今回、メロイの想像力あふれる世界と、LAIKAの手作りのアニメーションに関われたことが「喜びだった」と語っています。手で作る映像に、手で弾くオーケストラを合わせる──このスタジオと作曲家の相性の良さは、過去2作でもう証明済みです。

26曲・約65分のトラックリストを読む

公開されたトラックリストは全26曲。スコア25曲で約61分17秒、ディセンバリスツの1曲を足して合計約65分42秒になります。曲名を順に追うだけで、物語の流れがかなり見えてくるのが面白いところです。

  • 序盤(1〜6曲目):「The Impassable Wilderness」で始まり、「Meet the McKeels」「Into the Wild Wood」「A Wildwood Chase」と、主人公プルーが森へ踏み込んでいく流れ。先行配信された「Journey to South Wood」もここに入っています。
  • 中盤(7〜18曲目):「Pittock Mansion」はポートランドに実在する邸宅の名前。原作の舞台がポートランドの街と隣り合う“通り抜けできない森”であることを思い出させます。最長曲は12曲目の「Alexei's Story」(4分48秒)で、ここに物語の核となる回想が置かれていそうです。「The Ivy's Waltz」(1分14秒)のような小品も挟まり、緩急のつけ方がうまい。
  • 終盤(19〜25曲目):「Three Armies」「Into Battle」「ATTACK!」「The Plinth」と、戦いの4曲が連続し、合計で約11分53秒。そこから「Victory」「Time to Go Back」「Homecoming」と、帰り道の3曲で静かに着地していきます。

注目したいのは、終盤の配置です。11分以上の戦闘ブロックのあとに、合わせて6分に満たない帰還の3曲が置かれている。大きく鳴らしたあとで、すっと音を引いていく構成は、『KUBO』で見せたマリアネッリの“余韻の作り方”に通じるものがあります。

原作者のバンドが、エンドロールを歌う意味

このサントラのいちばんユニークな点は、やっぱり最後の26曲目でしょう。原作小説『ワイルドウッド』は、ディセンバリスツのコリン・メロイが書き、妻でイラストレーターのカーソン・エリスが挿絵を描いた2011年のデビュー作。その作者自身のバンドが、映画のエンドクレジット曲を書き下ろしているわけです。

メロイは、この物語が長年自分の人生の一部だったと語り、エンドクレジット曲を書くことでその世界に戻れたこと、そして映画の結末でこの曲が果たす役割に大きな意味を感じていると話しています。インディー・フォークの語り部が書いた森の物語を、オスカー作曲家のオーケストラが映画の中で鳴らし、最後にもう一度、作者のバンドの声で閉じる。原作と映画と音楽が一つの円を描くような作りは、なかなか他では見られません。

声の出演も豪華、日本公開に期待

声の出演はプルー役のペイトン・エリザベス・リー、カーティス役のジェイコブ・トレンブレイを中心に、キャリー・マリガン、マハーシャラ・アリ、アンジェラ・バセット、オークワフィナ、トム・ウェイツ、リチャード・E・グラントらと、とにかく顔ぶれが豪華です。脚本は『パラノーマン ブライス・ホローの謎』のクリス・バトラー。米国ではFathom Entertainmentの配給で10月23日に劇場公開されます。

日本での公開はまだ発表されていませんが、サントラは配信で一足先に聴けます。手作りの森がどんな音で鳴るのか、まずは「Journey to South Wood」から、そして全26曲を通して確かめてみてください。劇伴好きとしては、『KUBO』からつながるマリアネッリの“LAIKAの音”の現在地を聴ける一枚として、かなり楽しみです。