ついに最終クール。7月25日、禍進譚が始まる

ここ数年、土曜の深夜を静かに震わせてきた『BLEACH 千年血戦篇』が、いよいよ最後の一区切りを迎える。第4クール『BLEACH 千年血戦篇-禍進譚-』は2026年7月25日(土)23時、テレ東系列ほかで放送開始。原作者・久保帯人が「新しいアーティストにこそ主題歌を」という一貫した想いで選び抜いたオープニングはjo0jiの『I-BULL』、エンディングは9Lanaの『螺旋』に決まった。総監督・田口智久、アニメーション制作はPIERROT FILMS。斬月の突き刺さる荒野に片膝をつく一護と、頭上に立ちはだかるユーハバッハ――解禁されたメインビジュアルだけで、あの最終決戦が音とともに立ち上がってくる。

そして忘れてはいけないのが、スタッフ表の「音楽:鷺巣詩郎」の一行だ。派手な主題歌の話題に隠れがちだが、このシリーズを本当の意味で貫いているのは、彼の劇伴なのだと思う。

「劇伴が主役になる瞬間」を作ってきた作曲家

鷺巣詩郎と『BLEACH』の付き合いは、2004年放送の初代テレビアニメまでさかのぼる。あの頃から彼は、オーケストラとロック、電子音、そして荘厳なコーラスを平然と同居させ、ときに英語詞のヴォーカル曲すら「劇伴」として画面に投げ込んできた。戦闘シーンで突然歌が立ち上がり、BGMのはずの一曲がその話のクライマックスをまるごとさらっていく――『BLEACH』を観て育った世代にとって、あの高揚感はほとんど条件反射のように刻まれている。

興味深いのは、鷺巣が「わかりやすい燃える曲」だけの人ではない点だ。彼のスコアは静寂と間の使い方が巧みで、緊張を極限までためてから解放する。派手さの奥に、実は非常に緻密な設計がある。『千年血戦篇』では、その語彙が最新の録音とミックスでアップデートされ、初代とは違う重さと解像度で鳴っている。長く付き合ってきたファンほど、「同じ人の音なのに、確実に更新されている」ことに気づくはずだ。

  • オーケストラ×コーラス:荘厳さと不穏さを同時に描く、鷺巣スコアの背骨。
  • ヴォーカル曲を劇伴として使う大胆さ:歌がBGMの位置から物語を押し上げる。
  • 静と動の設計:間を恐れず、ためて、一気に解き放つ構成力。

そもそも「劇伴」は、画面の後ろで鳴りながら、観る者の感情をそっと操縦する黒子の仕事だ。だが鷺巣詩郎はときにその黒子を舞台の中央へ引きずり出す。『BLEACH』の名場面を思い返すとき、私たちは決め台詞と同じ熱量で「あのとき鳴っていた曲」を思い出す。それは作曲家が、ただ場面に寄り添うのではなく、場面と音楽で殴り合うような覚悟でスコアを書いてきた証だろう。最終クールという最も感情の高ぶる舞台で、その覚悟がどんな形をとるのか。期待しないほうが難しい。

音楽はどこへ向かうのか

『禍進譚』はシリーズの終着点であり、最も感情の振れ幅が大きい章になる。ここで鷺巣詩郎の劇伴がどんな最終回答を用意しているのか――それは主題歌以上に、この最終クールの聴きどころだと言い切りたい。長崎行男が手がける音響も含め、「音の作品」としての『BLEACH』がどう畳まれていくのかに注目したい。

放送前の助走もうれしい。最終クール放送を記念して、第1〜第3クールのベストエピソードが7月4日から3週連続でテレ東系列ほかにて放送され、第3クール『相剋譚』の無料一挙配信も実施される。復習のタイミングとしては完璧だ。ぜひ一度、キャラの台詞ではなく「後ろで鳴っている音」に耳を澄ませて観返してほしい。鷺巣詩郎という作曲家が20年以上かけて積み上げてきたものの厚みが、フィナーレを前にきっと違って聴こえてくるはずだから。