2026年夏アニメの中でも、劇伴好きとして見逃せない1本が幕を開けた。7月4日にTOKYO MXほかで放送がスタートしたオリジナルTVアニメ『グロウアップショウ ~ひまわりのサーカス団~』だ。『冴えない彼女の育てかた』の監督・亀井幹太とキャラクター原案・深崎暮人が再びタッグを組み、シリーズ構成を菊池たけしが務め、制作はA-1 Pictures / Psyde Kick Studio。そして音楽を担当するのが、菅野祐悟である。この名前を見た瞬間、「今期の劇伴はこれを追う」と決めた人も多いのではないだろうか。

昭和30年代×サーカスという、劇伴泣かせで劇伴映えする舞台

物語の舞台は、昭和30年代ごろの高度経済成長期をもとにした日本。サーカスが娯楽の中心として人々の生活に溶け込み、最高峰のサーカス団だけが参加を許される世界の祭典「キルクスコレクション」を目指して、数多くの一座が各地を巡業しながらしのぎを削っている──という設定だ。主人公は、万年金欠の「ひまわりサーカス」にやってきたサーカスの天才・鶴巻瑞佳。団長・麻利亜率いる個性豊かな団員たちとの出会いから、夢を追う少女たちのショウが始まる。

この題材、音楽の視点から見るととんでもなく「おいしい」。サーカスの客寄せや曲芸を彩る音楽といえば、日本では「ジンタ」と呼ばれた街頭の吹奏楽が思い浮かぶが、あの独特の哀愁と祝祭感が同居した響きは、まさに昭和の空気そのものだ。一方で、テント内のショウを盛り上げる音楽には、行進曲やワルツ、アクロバットの緊張感を煽るドラムロールまで、多彩な様式が求められる。時代考証に山田順子を迎えるほど「時代」にこだわった作品で、音楽がどこまで昭和の空気を吸い込んでいるのか。ここが本作の劇伴を聴く最大の楽しみになる。

菅野祐悟という「ドラマの音」の職人

菅野祐悟といえば、『PSYCHO-PASS サイコパス』や『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ、大河ドラマ『軍師官兵衛』など、アニメ・ドラマ・映画を横断して膨大な作品を手がけてきた売れっ子中の売れっ子だ。オーケストラの重厚さとエレクトロニクスの鋭さを自在に行き来し、キャラクターの心理に寄り添うメロディを書かせたら右に出る者は少ない。

その菅野が、今回は「見世物としての音楽」が物語の中心にあるサーカスものに挑む。劇伴が単なる背景音楽ではなく、作中で実際に鳴っている音楽──いわゆる劇中音楽としての役割も背負う可能性が高い題材であり、ショウの高揚感と、その裏側にある少女たちの汗と涙をどう描き分けるのか。『ジョジョ』で見せたケレン味も、『PSYCHO-PASS』で見せた冷たい叙情も知っているファンとしては、期待しかない。

サントラは9月30日発売。2枚組のボリュームに期待が高まる

公式サイトによれば、オリジナルサウンドトラックは2026年9月30日にAniplexからリリース予定。CD2枚組・税込3,850円という仕様で、放送開始からおよそ3カ月というスピード感のあるタイミングでまとまった形で聴けるのがうれしい。2枚組ということは、ショウを彩る華やかなナンバーから日常の巡業を支える小品まで、かなりの曲数が収録されると見ていいだろう。

また主題歌サイドも豪華だ。オープニングテーマはNOMELON NOLEMONの「ユラリユレル」。クリエイター・ツミキが立ち上げた2つの音楽ユニット、NOMELON NOLEMONとAoooがそろって本作の主題歌に参加しており、ツミキ自身「"サーカス"と"歌"はどこか似た性質を持っています」とコメントを寄せている。人間の限界に挑むフィジカルと、魂の熱量で心を震わせる精神性──この2つはそのまま、劇伴に求められるものでもある。

放送はTOKYO MX・BS11ほかで毎週土曜24時、ABEMA・dアニメストアで最速配信中。まずは本編で、昭和のテントの中に鳴り響く菅野サウンドを浴びてほしい。サントラ発売までの3カ月、毎週の放送で「あの曲はどれだ」と探す楽しみが続きそうだ。