伝説のドッジボール漫画が、令和の劇伴とともに帰ってきた

1990年代、コロコロコミック世代の少年少女を熱狂させた「炎の闘球児 ドッジ弾平」。あの熱血ドッジボール漫画の正統続編『炎の闘球女 ドッジ弾子』が、2026年7月6日、ついにTVアニメとして幕を開けた。主人公は、伝説の闘球児・一撃弾平の娘、一撃弾子。父から受け継いだ熱きソウルを令和のコートにぶっ放つ――闘魂注入、超エネルギッシュなスポ根全開の物語だ。だが劇伴好きとして今回まっさきに気になったのは、必殺シュートでも個性豊かな美少女キャラでもなく、そのコートを鳴らす「音」のほうである。

本作の音楽を手掛けるのは、岩崎文紀と塚越廉。とりわけ岩崎文紀は、90年代のロボット・特撮系アニメで数々の熱血サウンドを築いてきたベテランだ。『機甲警察メタルジャック』『伝説の勇者ダ・ガーン』『真(チェンジ!!)ゲッターロボ』『爆闘宣言ダイガンダー』――タイトルを並べるだけで、金管が咆哮し、リズム隊が疾走する“あの音”が耳の奥に蘇る人も多いのではないか。つまり『ドッジ弾子』は、熱血スポ根という題材に最も相性のいい書き手を迎えた布陣なのだ。これは期待するなというほうが無理がある。

スポ根の劇伴は「金管とリズム」でできている

そもそも、スポーツ根性ものの劇伴とは何でできているのか。改めて分解してみると、その芯にあるのはいつも決まって二つの要素――咆哮する金管(ブラス)と、前へ前へと押し出すリズムだ。トランペットやホルンのファンファーレが「これから熱い戦いが始まる」と高らかに宣言し、疾走するドラムとベースが選手たちの鼓動をそのまま刻む。ここに必殺技の“ため”を演出する緊迫した弦や、ピンチを描く不穏な低音が加わることで、たった一球の攻防が壮大なドラマへと膨らんでいく。

『ドッジ弾子』が描くのは、投げる・避ける・キャッチするというシンプルな競技だ。それだけに、音楽が担う役割はことのほか大きい。画面の中でボールが唸りを上げる瞬間、視聴者の背筋を実際に走らせるのは、多くの場合、映像そのものより劇伴のひと突きなのだ。岩崎文紀という書き手が積み重ねてきた“熱く鳴らす”技術は、まさにこの一瞬のために磨かれてきたと言っていい。聴きどころを整理すると、こうなる。

  • ファンファーレの高揚:試合開始や逆転の場面で鳴る金管の一撃。ここが決まると作品全体の温度が一気に上がる。
  • 疾走するリズム隊:ラリーの応酬を支える推進力。テンポとキメが選手のスピード感をそのまま音にする。
  • 必殺技のテーマ性:“ダンシングスカイショット”のような固有の技に、印象的なモチーフが与えられているかどうか。

1991年の「弾平」から2026年の「弾子」へ

忘れてはいけないのは、この物語には35年前の“原音”があることだ。前作『炎の闘球児 ドッジ弾平』のTVアニメは1991年10月から放送され、その劇伴を担ったのは勝又隆一。ブラウン管の前の子どもたちは、あの音とともに弾平の必殺シュートに拳を握った。時は流れ、令和の『弾子』では主題歌にももいろクローバーZ「会心の一劇」、エンディングにi☆Ris「Welcome to あざとさワールド」を迎え、劇伴もまた新たな作曲家の手に託された。世代を越えて“闘球の音”がアップデートされていく――この連なりそのものが、スポ根というジャンルが持つ生命力の証だろう。

90年代の熱血サウンドを知る耳には懐かしく、令和のアニメ音楽として聴けば新鮮に響く。『ドッジ弾子』の劇伴は、そんな二重の楽しみ方ができる一作になりそうだ。サウンドトラックの発売はまだアナウンスされていないが、放送を追いながら“この一球にどんな音が付いたか”を意識して観るだけで、作品の解像度はぐっと上がる。ボールが宙を舞うその刹那、耳をそばだててほしい。そこには間違いなく、令和の金管が咆哮しているはずだ。