この夏、いちばん気になっている“音楽の予定”を白状すると、それは新譜でも新番組でもなく、8月1日のパシフィコ横浜だ。『葬送のフリーレン』フィルムコンサート2026──Evan Callが書いたSeason2のスコアを、栗田博文指揮・東京フィルハーモニー交響楽団が国立大ホールで丸ごと生演奏する一日。しかもスペシャルゲストにmiletが立つ。第2期の余韻がまだ体に残っているうちに、あの音を“生”で浴びられるというのだから、これはもう行くしかない案件である。

ウィーンとブダペストで録られた音が、横浜に帰ってくる

『フリーレン』の劇伴が特別なのは、Evan Callが徹底して“本物のオーケストラの響き”にこだわってきたからだ。4月15日に発売されたSeason2のオリジナル・サウンドトラック(全22曲)も、ウィーンとブダペストでの海外録音を軸に組み上げられている。ブックレットには録音現場の写真や、韓国で開催されたフィルムコンサートの様子まで収められていて、めくるだけでこのプロジェクトが“ライブで鳴らすこと”まで見据えて作られてきたのが伝わってくる。

フィルムコンサートは、その海外録音のスコアを、今度は日本のオーケストラが目の前で立ち上げ直す試みだ。ヘッドホンで聴き込んできたあの弦の分厚さ、木管の息づかい、金管が炸裂する瞬間の“空気が震える”感覚──パッケージ音源では味わいきれない生の情報量が、ホールという器で一気に開放される。フリーレンの旅を彩ってきた音は、もともと生演奏に還すためのポテンシャルを最初から抱えていた、と言ってもいい。

栗田博文×東京フィル、そしてmiletという“声”

指揮を執るのは栗田博文。アニメ・映画音楽のシネマコンサートを数多く手掛けてきた実力者で、映像と生演奏をぴたりと同期させる“劇伴を生で鳴らす”仕事の勘所を知り尽くしている。演奏はスケール感で右に出るもののない東京フィル。ここにEvan Call本人が登壇し、さらにmiletがゲストとして加わる布陣は、正直かなり豪華だ。

miletといえば第2期にも歌で深く関わってきた“フリーレンの声”のひとり。劇伴のオーケストラと主題歌クラスのボーカルが同じステージで交差する瞬間は、フィルムコンサートならではのハイライトになるはずだ。公演は昼(13:00開演)と夜(18:00開演)の2回制で、1日で腰を据えて“フリーレンの音楽”に浸れる構成になっている。

なぜ「フリーレン」は生演奏で映えるのか

個人的に、この作品ほど“間”と“余白”で語る劇伴も珍しいと思っている。派手に鳴らすより、沈黙の一歩手前でそっと差し込まれる弦、旅の景色に寄り添う控えめな旋律──フリーレンという長命種の時間感覚を、音楽そのものが体現しているようなスコアだ。だからこそ、演奏者の呼吸やホールの残響がそのまま“意味”になる生演奏との相性が抜群にいい。

アニメ劇伴のフィルムコンサートは、ここ数年で完全にひとつのジャンルとして定着した。その中でも『フリーレン』は、海外録音のクオリティと物語の静けさを両立させた稀有な例であり、8月1日はそれを“最良の環境”で確かめられる場になる。第2期を追いかけてきた人はもちろん、Evan Callというコンポーザーの仕事を体感したい人にとっても、この夏見逃せない一夜だ。チケットを取れた人がうらやましい、というのが正直な本音である。