四半世紀を超えて更新される“攻殻”の音、その担い手が明らかに

士郎正宗が1989年に原作を発表して以来、押井守のアニメーション映画やハリウッド実写版まで、姿を変えながら世界を刺激し続けてきた「攻殻機動隊」。その最新シリーズとなるTVアニメ『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』のオリジナルサウンドトラックが、2枚組CDで2026年9月9日、2枚組アナログ盤で9月30日に発売されることが発表された。レーベルはフライングドッグ。ジャケットはサイエンスSARU監修のもと、tarou2が新規に描き下ろす。CDの初回生産分は特殊パッケージ仕様だ。

本作は2026年7月からカンテレ・フジテレビ系で放送が始まったばかりの“いま進行中”のシリーズで、制作は『映像研には手を出すな!』『DEVILMAN crybaby』などで知られるサイエンスSARU。ノンクレジットのオープニング・エンディング映像もすでに公開され、映像面での評判が高まる中、いよいよ音のパッケージが姿を現す格好になる。

川井憲次と菅野よう子──“二つの攻殻サウンド”という重すぎる遺産

「攻殻機動隊」ほど、音楽が作品の思想と分かちがたく結びついたフランチャイズも珍しい。押井守監督の劇場版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995)と『イノセンス』(2004)で川井憲次が紡いだ、ブルガリアン・ヴォイスと日本古来の“謡”を融合させた祝詞のような主題歌は、いまなお「攻殻の音」の代名詞だ。一方でテレビシリーズ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(2002〜)では菅野よう子が、Origaの歌声を軸にした電子と生楽器のハイブリッドで、まったく別の“攻殻サウンド”を確立してみせた。神話性の川井、疾走感の菅野。この二つの巨大な基準点を前に、新シリーズの音楽は「継ぐ」のか「壊す」のかという問いを最初から背負っている。

そこに、新しい世代の書き手たちがどう応答するのか。今回のクレジットを見ると、その答えは「一人の天才が背負う」のではなく「異なる畑の三人で束ねる」という、いかにも現代的な設計になっている。

岩崎太整・小西遼・YUKI KANESAKA──畑違いの三人が組む理由

音楽監督を務めるのは岩崎太整。映画『竜とそばかすの姫』で日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞し、現在公開中の『TOKYOタクシー』の音楽も手掛ける、映画音楽の第一線にいる作曲家だ。そこに、小西遼が加わる。2025年の大阪・関西万博の開会式で音楽監督を務め、Chara+YUKIやMrs. GREEN APPLE、TOMOOらのサウンドプロデュースでも知られる、ポップスと現代音楽を自在に横断する存在である。そして三人目が、アメリカを拠点に活動し、近年ではTVアニメ『Dr.STONE』の音楽で世界的な評価を得たYUKI KANESAKA

映画音楽の重心、ポップス/現代音楽の越境感覚、そして海外拠点のサウンドデザイン。この配合は、グローバルに読まれる原作を持ち、海外配信を前提に作られる現在のアニメにとって、じつに理にかなっている。菅野よう子が一人で“世界基準の攻殻サウンド”を打ち立てた時代から二十余年、その役割を今度は国境もジャンルも越えたチームで引き受ける――サントラを聴く前から、この座組み自体が新シリーズの立ち位置を雄弁に語っている。全曲を通して、三人の色がどこで溶け合い、どこでぶつかるのか。9月9日、その答え合わせが始まる。