10年ぶりの完全新作『機動警察パトレイバー EZY』が、全3章構成で劇場に帰ってきた。5月15日のFile 1に続き、File 2は8月14日公開——2030年を舞台に、監督・出渕裕、脚本/シリーズ構成・伊藤和典、そして音楽・川井憲次という、あの「ヘッドギア」ゆかりの面々がふたたび顔を揃える座組だ。その熱がまだ冷めやらぬ8月10日、旧作ファンの心臓をまっすぐ撃ち抜くアイテムが投下される。『機動警察パトレイバー Early Days MUSIC COLLECTION CD BOX』——初期パトレイバーの音楽を、まるごと11枚に封じ込めた復刻BOXである。

「アーリーデイズ」から劇場版1まで、11枚組でよみがえる原点

収められるのは、1988年のOVA「アーリーデイズ」期から劇場版1作目までを彩った音楽の数々だ。イメージ・サウンドトラック・アルバム“INTERFACE”“INTERCEPT”、ソング・コレクション“INTERMISSION”、“INFINITY∞”“INQUEST”、ベスト“INTENTION”、そして『1999・PATLABOR THE MOVIE SOUND RENEWAL』まで。さらに、かつてLDサイズの箱で知られた3枚組「CD BOX DELUXE」を、今回はCDサイズにリサイズして丸ごと同梱。CDV作品「CONTACT-1&2」の音源まで拾い上げる、まさに“初期の全部入り”だ。音源はUHQCDでリマスターされ、紙ジャケット仕様で一枚ずつ復刻される。

  • 音楽CDとしての再発売は、2006年の「メモリアルコレクション」限定盤以来じつに20年ぶり。長らく中古市場でしか出会えなかった音源が、正規盤としてまとめて手に入る。
  • 橘田幸雄氏が2026年に描き下ろした「98式AV イングラム1号機」のBOXアートに、188ページの別冊ブックレット復刻収録。価格は税別22,000円、品番はLACA-39187、原盤はWarner Music Japan。
  • 作曲の中核はもちろん川井憲次。のちに『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』で世界を震わせる、あの独特な“和”と電子音の出発点が、ここにぎっしり詰まっている。

「イメージ・アルバム」という発明を、いま聴き返す

このBOXでいちばん唸らされるのは、“INTERFACE”“INTERCEPT”という初期イメージ・アルバムの存在だ。まだ映像が世に出るより前、あるいは並走するかたちで、劇伴とボーカル曲を織り交ぜながら“もう一つの物語”として音だけで世界を提示する——80年代末のOVA文化が生んだ、あの贅沢な作り込み。単なる「劇中BGM集」ではなく、一枚のアルバムとして起伏を持って聴かせる構成は、いま改めて向き合うと驚くほど攻めている。特車隊マーチのユーモアと、川井憲次らしいひんやりとした電子音の陰影が同居する振れ幅こそ、パトレイバーという作品の体温そのものだ。サブスクでBGMがバラ売りされる時代に、この“物語を持ったアルバム”という形式を丸ごと味わえる意味は大きい。

沈黙の20年を破る、絶妙すぎるタイミング

そして何より効いているのが、そのタイミングだ。20年ぶりの音源復刻が、新作『EZY』の劇場公開と真正面から重なる。同じ川井憲次が、同じイングラムの物語に、いまも音を付け続けている——その事実を背骨にして、80年代末の“原点”と2030年を描く“最新”が地続きでつながる。古い音源の再発売にありがちな懐古趣味ではなく、現在進行形のシリーズを聴き手の側から補強する一枚として機能するのが、この復刻BOXの美しさだと思う。File 2の公開直前、初期のスコアで耳を“調律”してから劇場へ向かう。そんな贅沢な予習が、この夏はできてしまうのだ。