ドラマの音を語るとき、この名前を外すわけにはいかない。得田真裕(とくだ・まさひろ)。『アンナチュラル』『MIU404』『監察医 朝顔』『家売るオンナ』『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』——テレビの前で息を呑んだあの瞬間、鳴っていた音の多くが、この人の手によるものだ。8月7日、その得田が音楽を手がける日本テレビ系土曜ドラマ『告白-25年目の秘密-』のオリジナル・サウンドトラックが、2026年9月9日に発売されると発表された。全29曲。放送は7月11日にスタートしており、主演は松村北斗(SixTONES)、主題歌も同じくSixTONES「マイオンリー」が担う。

“キャッチーな劇伴”という職人技

得田真裕は1984年、鹿児島の生まれ。長崎大学教育学部で作曲を専攻し、劇伴の世界へ進んだ。彼の音の何が特別かといえば、一度聴いたら耳から離れないフックの強さだと思う。『MIU404』の疾走するビート、『アンナチュラル』で流れる切なくも凛としたテーマ。ドラマ本編を観ていない人でも、サントラ単体で口ずさめてしまう。劇伴は本来、映像の裏方に徹する音楽だ。だが得田の書くメロディは、映像に寄り添いながらも、それ自体が一個の“歌”として立ち上がる。この絶妙なバランス感覚こそ、彼が10年以上第一線で書き続けてこられた理由だろう。

興味深いのは、彼がギタリストでもあることだ。バンド的なグルーヴ、生楽器の呼吸、そしてオーケストラの厚み——それらを一人の身体の中で往復できるからこそ、テンポの速い刑事ドラマからしっとりしたラブストーリーまで、まるで別人が書いたかのように音色を変えられる。

ラブサスペンスに宿る“狂気”の音

今回の『告白-25年目の秘密-』は、幼い頃から25年間ひとりの女性を想い続ける主人公を軸にした“ラブサスペンス”だ。純愛か、それとも執着という名の狂気か——その揺らぎこそが物語のエンジンになっている。発表されたサントラの収録曲名を眺めるだけで、その二面性が音楽の設計図として立ち上がってくる。「運命の出会い?!」「愛が重すぎる男」「純愛か狂気か」「執着という名の『狂気』」といった曲名が並び、甘さと不穏さを同じ楽曲群の中で行き来させる構成になっているのがわかる。

  • 「告白」「-25年目の秘密-」:物語の核を担うメインテーマ群。タイトルを冠した曲がいくつも置かれ、作品の“顔”として機能する。
  • 「Pandora」「告白~Piano~」:終盤に配置されたこの2曲が、開けてはいけない箱を開けてしまう物語の帰結を、静かに、そして残酷に照らす。

愛の音楽とサスペンスの音楽は、本来まったく異なる文法を持つ。前者は解決へ、後者は緊張の持続へと向かう。得田はそのどちらも書ける作曲家だからこそ、この“愛が恐怖に反転する”物語の音を託されたのだろう。

なぜ、ドラマ劇伴のサントラを聴くのか

正直に言えば、ドラマのサントラはアニメや映画のそれに比べて“単体で聴かれる”機会が少ない。放送が終われば、その音は記憶の中の名場面と一緒に静かに眠ってしまいがちだ。だからこそ、こうしてCDというかたちで音が残されることには大きな意味がある。映像を離れた劇伴は、聴き手それぞれの記憶を呼び戻す装置になる。あのシーンで泣いた、あの瞬間に鳥肌が立った——その体験を、音だけでもう一度なぞれるのだ。

9月9日、松村北斗が演じた“最も無垢で最も危険な愛”の音が、パッケージとして手元に届く。得田真裕という職人が、また一つ、テレビの記憶を音に刻む。放送を追いかけている人はもちろん、ドラマ劇伴という奥深いジャンルの入口を探している人にも、この一枚は静かに、しかし確かにおすすめしたい。