あのイントロを思い出せる人は、たぶん一生忘れない。ドラム&ベースの上をシンセのアルペジオが駆け抜け、ストリングスが一気に湾岸署へなだれ込む――松本晃彦の「Rhythm And Police」だ。テレビシリーズから四半世紀以上、劇場を満席にし続けてきた『踊る大捜査線』が、いよいよ新作『N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』として2026年9月18日に帰ってくる。そしてその同じ日、松本晃彦によるオリジナル・サウンドトラックがユニバーサル ミュージックから発売されることが決まった。映画好き・劇伴好きにとっては、公開日そのものが「音の解禁日」でもあるわけだ。

音楽が"主役級"だった、数少ない邦画シリーズ

『踊る大捜査線』という作品のすごさは、劇伴が単なる背景ではなく、キャラクターと同じ強度で記憶に残っている点にある。青島俊作が走り出せば「Rhythm And Police」が鳴り、事件が動けば緊迫のブラスが刺さる。台詞を覚えていなくても、あのテーマだけは口ずさめる――そんな邦画は、そう多くない。松本晃彦のスコアは、90年代後半のクラブミュージックの空気と、刑事ドラマの熱量を一本の線でつないだ。今回のサントラ発売がこれだけ話題になるのは、ファンが「物語の続き」と同時に「音の続き」を待っていたからにほかならない。

思えば1997年のテレビシリーズ以来、この作品は「刑事ドラマ×ダンスミュージック」という当時としては大胆な掛け算を、劇伴という一点で成立させてきた。ドラムンベースの疾走感、シンセの都会的な冷たさ、そこに人間ドラマの体温を乗せる――松本晃彦のバランス感覚がなければ、あのテーマはただの「かっこいいBGM」で終わっていたかもしれない。四半世紀を経てなお色あせないのは、流行りの音を追ったのではなく、作品の内側から必然として鳴らされた音だったからだ。

松本晃彦という、劇伴の"設計者"

松本晃彦は、メロディを書くだけの作曲家ではない。彼の仕事は、シーンのテンポ、編集のリズム、俳優の呼吸まで計算に入れた「音響設計」に近い。だからこそ『踊る大捜査線』の音楽は、映像から切り離してアルバム単体で聴いても成立し、逆に映像に戻せばぴたりとハマる。今回の新作でも、監督は本広克行、脚本は君塚良一、プロデュースは亀山千広、そして主演は織田裕二という、シリーズを作り上げてきた顔ぶれが集結している。同じチームが、四半世紀を経て同じ音楽家と組む――その継続性こそが、このスコアに宿る"重さ"の正体だ。新しい街(メトロポリス)を舞台に、あのサウンドがどう更新されるのか。旧作の焼き直しではなく、2026年の空気で鳴らし直された「Rhythm And Police」を、僕らは劇場で確かめることになる。

CD、そして2枚組アナログ盤。"配信同時"が意味するもの

今回のリリース形態も見逃せない。CD(1枚組)は映画公開と同じ2026年9月18日発売、税込3,300円で、同日から各種音楽配信サービスでの楽曲配信もスタートする。さらにアナログ盤(LP2枚組)が2026年11月18日、税込5,500円で追って登場する。ジャケット写真や収録曲の詳細は後日公開とのことだが、劇伴が「公開と同時に配信で聴ける」時代になったこと自体が、この作品の"間口の広さ"を物語っている。かつては劇場のスクリーンでしか出会えなかった音が、公開日の夜にはイヤホンの中で鳴っている。そしてじっくり浸りたいファンには、2枚組LPという"儀式"も用意されている。『踊る大捜査線』の音は、こうしてまた新しい聴き手のもとへ駆け抜けていく。事件は、やっぱり音楽で起きている。