『アバター 伝説の少年アン』『レジェンド・オブ・コーラ』に続く“アバター”シリーズのアニメ新作『Avatar: Seven Havens(アバター:セブン・ヘイブンズ)』。そのBook 1「Survival」のサウンドトラックが、10月30日にRepublic Recordsからデジタル配信されました。全36曲。作曲はもちろん、20年近くこの世界の音を鳴らし続けてきたジェレミー・ザッカーマンです。

配信日の10月30日は、Paramount+でシーズン1の最後の4話(第10〜13話)が公開された日でもあります。10月9日の配信開始から、3話・3話・3話・4話と毎週まとめて公開されてきた13話が出そろったその日に、スコア盤も同時に届いた格好です。Film Music Reporterのコメント欄では「アバターのアニメシリーズで、シーズン完結と同時にスコア盤が出るのは初めてでは」という読者の声も上がっていました。長年のファンほど、このスピード感にはちょっと驚いたはずです。

「全部シンセで」──共同原作者からの注文

今作の音楽でいちばん大きな変化は、編成そのものです。BuzzFeedのインタビュー(10月9日公開)によると、共同原作者のブライアン・コニエツコが求めたのは「オールシンセのスコア」。ザッカーマン本人も「まったく別物」と語っています。

思い返すと、『コーラ』のころの彼は、いわば“室内楽”サイズの編成の中で工夫を重ねていました。シンセに切り替えたことで、その制約から抜け出し、もっと大きく、没入感のある音を作れるようになった──というのが本人の説明です。もともと彼はバークリー音楽大学でジャズとコンピューター音楽を、カリフォルニア芸術大学(CalArts)の修士課程で現代作曲やコンピューター音楽を学んだ人。ドラマ『スクリーム』のシーズン3などでエレクトロニックな仕事も経験しています。「オーケストラの人」がいきなりシンセに挑んだのではなく、もともと持っていた引き出しを、シリーズで初めて全開にした、と考えるとしっくりきます。

ここが面白いのは、同じ2026年に彼が真逆の仕事もしていることです。7月に公開された長編映画『Avatar Aang: The Last Airbender』では、スコアの「99.5%を生録音」したと話しています。映画はフルオーケストラと合唱、テレビシリーズはオールシンセ。同じ作曲家が、同じ世界観の2作品を、同じ年に正反対の手法で書き分けたわけです。

メインタイトルに響く、南インドの“声の打楽器”

シンセ一色かと思いきや、メインタイトルにはひとつだけ人の声が入っています。ザッカーマンは最初の稿を書き直し、南インド・カルナータカ音楽の口唱打楽器「コナッコル」を取り入れました。リズムを音節で“歌う”技法で、迎えたのはカルナータカ音楽の歌手ヴァリジャシュリー・ヴェヌゴーパル。彼女の声は「控えめに」使ったそうで、劇場版『Avatar Aang』のサントラにも参加しています。今回のアルバムでも、1曲目の「Avatar: Seven Havens Main Title」と、ラストの36曲目「Main Title (Composer Version)」に彼女の名前がクレジットされています。

主人公パヴィをはじめ、声の出演にはサヘリ・カーン、アイシュ・デヴァンらが並びます。物語の舞台はコーラの時代のあと、大災厄で世界が砕けたあとの世界。そこへ南インドの伝統的なリズム言語を持ち込んだのは、“アバターの音”がもともと世界各地の音楽を下敷きにしてきたことを考えると、とても自然な一手だと感じます。

36曲のトラックリストを読む

  • 序盤:「Hello Friend」「Squad Leader Jae」「Pavi's Hideaway」に続いて「You Can Airbend」。土の国の少女が自分がアバターだと知る物語なのに、早い段階で“エアベンディング”が出てくるのが気になるところ。
  • 中盤:「Demon Storm」「Feral Beast」「Stampede」と荒々しい曲名が続く一方で、「Twin Promise」「Family Is Important」など、生き別れの双子との絆を思わせるタイトルも。
  • 終盤:「The Faceless Queen」「The Cosmic Plane」「Welcome Back, Avatar」を経て、「I Am the Avatar」「The Second Chakra」「This Is the Path」へ。チャクラという言葉に、旧作でアンがグルの導きで向き合った“チャクラを開く”修行を思い出す人も多いはず。

あいだに挟まる「Avatar: Seven Havens Previously On」(前回までのあらすじ用の曲)まで収録しているあたりも、テレビシリーズのスコア盤らしい律儀さです。

あと3シーズン、音はどこまで変わるか

シリーズはすでに3シーズンの追加が決まっています。AWNの報道では、もともと26話を13話ずつ2つのBookに分ける構成と伝えられていて、Book 1「Survival」はその前半にあたります。シンセという新しい“楽器”を手にしたザッカーマンが、次のBookで何を足し、何を削るのか。オーケストラの温かさで育った旧作ファンも、まずは36曲を順番に聴いて、この新しい質感に耳を慣らしておくのがいちばんの予習になりそうです。