テキサスの高校フットボールを描いた『プライド 栄光への絆(Friday Night Lights)』を覚えている人なら、この組み合わせにはちょっと胸が熱くなるはずです。Netflix映画『The Mosquito Bowl』のサウンドトラックが、10月30日にNetflix Musicからデジタル配信されました。全17曲・約56分。スコアを手がけたのは、テキサス出身のポストロック・バンド、Explosions in the Skyです。
監督はピーター・バーグ。原作はバズ・ビッシンジャーのノンフィクション『The Mosquito Bowl』。ビッシンジャーは『Friday Night Lights』の原作者で、バーグはその映画版(2004年)の監督、そしてExplosions in the Skyはその映画に音楽を提供したバンド。つまり今作は、「原作・監督・音楽」の3者が、ふたたびアメリカン・フットボールの物語で顔をそろえた一本なんです。映画は10月30日から米国の一部劇場で公開され、Netflixでは11月25日から配信予定です。
クリスマス・イブのガダルカナル、64人のフットボール
題材は実話です。ビッシンジャーの公式サイトによれば、1944年のクリスマス・イブ、ガダルカナル島の土とサンゴの上で、海兵隊の第4連隊と第29連隊がフットボールの試合をしました。出場したのは64人。その多くは大学フットボールのスター選手でしたが、のちの沖縄戦で15人が命を落としています。脚本はバーグと、『レヴェナント:蘇えりし者』のマーク・L・スミスの共同。ニコラス・ガリツィン、ビル・スカルスガルド、レイ・ニコルソンらが出演しています。
フットボールと戦争。『Friday Night Lights』が「町の誇りを背負った少年たち」の話だったとすれば、今作は「未来を約束された若者たちが、それを置いて戦地へ向かう」話。同じ“フィールドの物語”でも、行き着く先がまるで違います。
曲名を並べると、物語の“地図”が見えてくる
今回のアルバム、まず曲名の並びが雄弁です。1曲目は「Last Games」(5分14秒)。直後に「Pearl Harbor」「Goodbyes」が続き、アルバム最長の「Transformations」(7分51秒)へ。ここまでで、フットボール選手が兵士へと変わっていく流れがそのまま聴こえてきます。
- 前半:「Last Games」「Pearl Harbor」「Goodbyes」「Transformations」「Into Battle」──日常から戦地へ
- 中盤:「Mosquito Bowl (Part 1)」「Mosquito Bowl (Part 2)」──タイトルの試合は11・12曲目、アルバムのほぼ真ん中に置かれています
- 終盤:「Okinawa」「Rescued」「Collecting Tags」「A Bomb」、そして最後の「Returns」(5分16秒)
面白いのは、題名にもなっている試合の曲が“クライマックス”ではなく“折り返し地点”にあること。試合のあとに「Okinawa」が来て、「Collecting Tags」と続く。認識票を集める、という曲名の重さは、実話を知っているとかなり堪えます。冒頭と最後に5分台の長尺曲を置いて、「Last Games」で始まり「Returns」で閉じる構成も、いかにもアルバムとして聴かせるバンドらしい設計です。
なぜバーグは、何度もこのバンドを呼ぶのか
バーグとExplosions in the Skyの縁は『Friday Night Lights』だけではありません。アフガニスタンを舞台にした『ローン・サバイバー』(2013年)では、スティーヴ・ジャブロンスキーとともにスコアを担当。さらにNetflixのミニシリーズ『アメリカン・プライミーバル』(2025年)でも組んでいて、今作でまたNetflixに戻ってきた形です。
このバンドの音楽は、歌もなく、静かなギターのアルペジオから少しずつ音が積み上がり、最後に大きな波となって押し寄せる──いわゆる“クレッシェンド型”のポストロック。派手なオーケストラで感情を指示するのではなく、聴き手の中で感情が自然に膨らむのを待つ音です。若者たちの栄光と喪失を、説明せずに描きたいバーグの演出と相性がいいのは、たぶんそこなんでしょう。
そしてもうひとつ。日本の私たちにとって、「Pearl Harbor」「Okinawa」と並ぶこの曲目は、物語の“向こう側”の歴史でもあります。同じ戦争を、アメリカの若者の目線から、ポストロックの音で聴く。ちょっと特別な体験になるはずです。11月25日のNetflix配信までに、まずはアルバムで、22年ぶりのこの再会を確かめてみてください。