中つ国の音楽を、もう一度鳴らす季節がやってきました。Prime Videoのドラマ『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』シーズン3が11月11日から独占配信。それに合わせて、ベア・マクレアリーによるシーズン3のサウンドトラックが11月13日にデジタル配信されることが発表されました。収録は全22曲。同日からMutant RecordsでCDとアナログ盤の注文も始まり、さらに後日には拡張版のデジタル・コレクターズ・エディションも控えているとのこと。シーズン1・2を追いかけてきた人にとっては、配信開始からわずか2日後に“答え合わせ”ができるスケジュールです。
エレギオン陥落から5年後──「指輪が完成する前夜」の音
シーズン3の舞台は、エルフの都エレギオンが陥落してから5年後。サウロンの軍勢は中つ国を制圧し続け、残る拠点はドワーフの王国カザド=ドゥーム、エルフのリンドンと裂け谷だけ。そしてサウロンはモルドールのバラド=ドゥーアで、すべてを統べる「一つの指輪」の完成に執念を燃やしている──という、シリーズでもっとも暗い局面です。全8話で、初回4話一挙配信のあと、11月18日・25日に2話ずつ。
この物語の“重さ”は、トラックリストにもはっきり出ています。「Insurrection in Númenor」「Battle at Gundabad」「Fell Beast」「Mûmakil on the March」「The Balrog」「Sammath Naur」「One for the Dark Lord」「Embarking from Barad-dûr」……。曲名を上から読むだけで、戦と滅びの気配が濃くなっていく並びです。とくに「Sammath Naur」(滅びの山の火の室)や「The Doom of Men」といった名前は、トールキン読者なら思わず身構えるはず。今シーズンはシリーズで初めてバルログが言葉を発する(声はサイモン・ペッグ)とも伝えられていて、「The Balrog」がどんな音になっているのかは大きな聴きどころになりそうです。
2曲目にメシュガーの声──「Nazgnagôl」という異物
今回いちばん目を引くのが、2曲目の「Nazgnagôl」。スウェーデンのメタルバンド、メシュガーのヴォーカリストとして知られるイェンス・キッドマンと、モーガン・ソーンがフィーチャーされています。ナズグナゴールは、シーズン3で初登場するサウロンに仕える鎧姿の存在。つまり、新しい“敵”のテーマに、エクストリーム・メタルの声をぶつけてきたわけです。
マクレアリーはもともと、オーケストラに民族楽器やロック的なエネルギーを持ち込むのが得意な作曲家。『ウォーキング・デッド』や『バトルスター・ギャラクティカ』、そして『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』でも、伝統的なスコアの枠からはみ出す音を平然と鳴らしてきました。『力の指輪』はハワード・ショアがメインタイトルのテーマを書き、マクレアリーがスコアを担ってきたシリーズ。ショアが築いた“中つ国の正統”の響きの隣で、メタルの声がどんな居場所を与えられているのか──アルバムを通して聴くと、このシーズンの“異物感”そのものが設計されていることが見えてくるかもしれません。
声で語るアルバム──AURORA、ディーサ、ガラドリエル
もうひとつの特徴は、とにかく“声”が多いこと。オープニングを飾る「Morning Shall Come」は、ノルウェーのシンガーソングライターAURORAとマクレアリーの共作によるオリジナルソングで、11月6日に先行配信されています。ほかにも、
- 「The Most Devoted」:カトリン・ステンベック参加
- 「Searching in Stone」:ドワーフの姫ディーサ役のソフィア・ノムヴェテ参加
- 「Echoes of Ancient Music」:ガラドリエル役のモーフィッド・クラーク参加
- 「Where the Shadows Lie (for Children's Choir)」:児童合唱版でアルバムを締めくくる
と、ゲスト・俳優・合唱がアルバムの要所に配置されています。ディーサの歌はシーズン1でもドワーフの“石に語りかける歌”として印象を残しましたが、今回もタイトルに「Stone」が入っているのが心憎いところ。そして最終曲のタイトル「Where the Shadows Lie」は、あの指輪の詩の結びの一節です。指輪が完成へ向かうシーズンのサントラを、子どもたちの声で“影の横たわる地”と歌わせて閉じる──この構成だけで、マクレアリーがこのシーズンをどう着地させたいのかが少し透けて見えます。
配信日の2日後、まずは曲名順に聴いてみたい
シーズン1・2では、エピソードごとのデジタル配信なども含めて膨大な量の音楽が世に出てきた『力の指輪』。今回は22曲という凝縮された選曲で、後から拡張版が出るという二段構えです。まずはこの22曲で、メタルの咆哮と児童合唱という両極のあいだに、マクレアリーがどんな中つ国を描いたのかを確かめたいところ。11月11日に初回4話を観てから、13日にアルバムを頭から通して聴く。そんな2日間を過ごしたくなる、濃いサウンドトラックになりそうです。