2008年からもう7度目のアニメ化となる大人気作品、夏目友人帳。原作の漫画も読み切り作品時代から数えると2003年から始まっており、2025年現在も連載中と、比較的短めに完結する作品が多い少女漫画の中ではかなりの長寿漫画と言える。
白泉社は他の少女漫画と比べて一味違う読み味の漫画が多く、夏目友人帳はその代表的な作品の一つと言える。少女漫画では一にも二にも恋愛が主軸になっている作品が多いが、恋愛要素は少なく心温まるストーリーが主だった話として展開していくため、筆者のような中年男性も読者層として取り込める。他の少女漫画と比べて間口が広いため読者層も多いので、人気も長く続いているのだろう。
主人公である夏目が、自身の祖母である夏目レイコの残した「友人帳」に翻弄される話であるが、割と妖達との関係性を解いていくような話が多く、静かに感動できる作品である。1話完結の話が多いのでアニメ一作目から見なければついていけない!というわけではないのも、これから見てみようという視聴者としてはありがたいところだろう。
夏目友人帳は、舞台が田舎だ。そのため自然の中というシチュエーションがアニメの中で多々出てくる事になる。そしてその都度、その場面に合ったとても素敵な劇伴が流れてくる。
例えば3話「とおかんや」で知らない場所を彷徨い歩いている心細さを、コードワークやメロディになっているリフなどで表しつつも、見かける花や美しい木々、そこに息づく人々もいるのだ、という不思議な安息感をベルのような楽器の音色で表しているように思える。同じく3話で畑にかかしを置くときに、気付かずに禁術を…という説明をしている場面に流れる劇伴は美しい笛の音色で、2音を繰り返すように何度も何度も行ったり来たりするようなリフを奏でている。このように、相反するようなものを音楽で表しているような曲が今回の「夏目友人帳 漆」では多いように感じる。とてもクセになるというか、耳心地が良いのか不安な気持ちになったら良いのか全然わからなくなるような、とにかく不思議な魅力がたっぷり詰まった曲だらけで、それがまた夏目友人帳の世界観とがっぷり四つに組み合う。原作者さんが描きたかった世界を、音楽でここまで如実に表す事が出来るのは本当に神業的だ。音符だけで映像がなくとも日本の田舎らしい、原風景を脳裏に浮かばせるような曲も夏目友人帳の劇伴の魅力だ。
さてそんな今作の劇伴の作曲家は、もちろんピアニストの吉森信氏である。アニメ一作目から、劇場版まで全ての夏目友人帳の劇伴を担っているからこそ、回を追うごとにどんどん良くなって行くのかもしれない。
吉森信氏の作る夏目友人帳の劇伴は、最近の劇伴の流行のように音をたくさん詰め込むようなものではなく、休符の中にも情緒を感じるようなゆったりした雰囲気が、とても聞いていて気持ち良いところだ。流れる音楽の優しさが、主人公の夏目の優しさであったり、どこか儚いような音符が妖と人間の関係性であったりを感じられるようなつくりになっていて、この音楽無しに夏目友人帳を語る事はできないとさえ思ってしまうほど。
原作にある不思議な魅力を、さらに引き立たせる劇伴のあるべき姿、魅力がここに詰まっていると思う。
公式サイトhttps://x.com/natsumeyujinchoより引用