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株式会社アテナ

映画「SPY×FAMILY CODE:WHITE」の唸らされる劇伴の妙技 

漫画SPY×FAMILYの人気の秘訣はなんだろう。圧倒的な読みやすさ、画力の高さ、舞台設定やストーリーのわかりやすさ、そして深さ、それももちろんあるとは思うが、最大の要因はアーニャをはじめとする魅力的なキャラクター達の人気によるものだろう。キャラクター関連グッズがどんどん出続けているのがその証明だと思う。そしてそれはアニメになってからより顕著になった。声優さん達の見事な演技でキャラクターにより命が吹き込まれ、さらに魅力が伝わりやすくなった事で、SPY×FAMILYは国民的人気アニメとなったのだと思う。

そんな魅力的なキャラクター達の心情や舞台設定への説得力を増しているのは何と言っても劇伴の力によるところが大きい。以前もSPY×FAMILYのアニメの劇伴については語らせて頂いたが、今回の映画「CODE:WHITE」にもやはりお馴染みの劇伴は使われており、愛と遊び心のあるオマージュに溢れた音楽はやはり観ている者をワクワクさせる力があった。そして今作で初めて使われていた劇伴で特にすごいと感じたのは、まず冒頭に家族が乗っていた列車がフリジス地方に着いた時にかかったシーン。気温が低く雪が降る地方ならではの澄んだ空気感と、旅行先に着いた瞬間の高揚感が混ざり合ったような音楽は、聴いているだけで一緒にその列車に乗っていて、同じ景色を見たような気持ちにさせてくれる。筆者は北海道に住んでいるので雪はうんざりするほど見慣れているが、その寒々としつつも凛とした空気感は毎日肌で感じているし、旅行に行った時のワクワクする感情というのは何歳になっても他に代えがたいような気持ちにさせられるという事は重々承知している。

寒い地域に行きたいとはあまり思わないものだが、もし普段雪を見ない地域に住んでいて北海道に旅行に来た時にこの劇伴のように鈴の音、高音の綺麗なヴァイオリン、ハープやフルートの楽しげでありつつも上品なメロディが流れていたら感動はさらに増すだろうなあと否応なしに想像させられた。

瓦礫と絆亭でかかるケルティックな劇伴は本格的で、お店の外観ともピッタリ合う。古いお店と古楽器を使った音楽にはロマンが詰まっている。レストランに軍関係者が押しかけてきてメレメレ(この映画にのみ登場するオリジナルのお菓子である。なんとググってみると見た目からだけで再現レシピを作っている方までいらっしゃるのがスゴイ)を横取りしてくるシーンの、緊迫感がありつつも映画音楽らしい技法がたくさん散りばめられている。序盤のクルクルと変わり続ける展開もこのように劇伴の説得力一つで場面や心情などが一瞬で腑に落ちるように工夫されている。

話は変わるようで変わらないのですが、フリジス地方の市場のような場面で見る街並みは札幌で毎年11月からクリスマスにかけて開催されるミュンヘン・クリスマス市で見る特設会場に雰囲気がとても似ていて、そのシーンでかかっていた劇伴を聞いた時に「あ、これが正解なのか」と感じた。札幌とミュンヘンは姉妹都市で、気候などが似ているとは知ってはいても実際にドイツに行った事はないため、どのような場所なのかは想像する他なかったが、この劇伴の圧倒的な説得力が非常に心に残っており、きっとこんな音楽が自然と聞こえてくるような素敵な場所なのだろうと妙に納得してしまった(SPY×FAMILYの舞台は架空の世界だが、モデルはドイツと言われている)。このシーンの先にも沢山の素晴らしい劇伴があったが、一つ一つ説明してしまうとこの映画の全てをネタバレしてしまいそうなのでこの先は是非、映画を見て楽しんで頂けたらと思います。非常にSPY×FAMILYらしい、ファンも納得、初見の人も入りやすい映画なのでとてもオススメです!

公式サイトhttps://spy-family.net/codewhite/より引用

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