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株式会社アテナ

花は咲く、修羅の如くの眩い程の夢の尊さを感じられる劇伴に心打たれる 

筆者が通っていた高校には放送部というものがあった。そして、そこは北海道の中ではかなり優秀な放送部だったらしく全国大会の常連だと言われていた。正直、甲子園やインターハイのようにスポーツ系の部活での全国大会というものは知っていたが、文化部の全国大会というものは全くピンとこなかった。そもそも放送部が何をする部活なのか、何を全国の他の放送部と競うのかも全くわからなかった。きっと普通の高校生ならばそうなのではないだろうか。「花は咲く、修羅の如く」は朗読が好きな少女が放送部に入り、夢を追って行く話だ。第一話で主人公の春山花奈がたまたま朗読をみていた先輩に部活に勧誘される事になるが、その際に放送部の全国大会、NHK全国高校放送コンテストの事を耳にしてもピンときていなかったようだった。16000人が参加すると聞いて驚いたが、そんなに参加するのにそんなに知名度無いんだなぁというのが正直な感想だ。おそらくこの場面、視聴者もほぼ同じような感想を抱いたと思う。日本の漫画は多種多様だ。いまだに根強い人気の野球漫画、サッカー漫画。有名どころがある漫画ではバスケ漫画にテニス、柔道…スポーツはかなり沢山の漫画が描かれているが、ここ10年くらいは文化部系の漫画もかなり目立つ。スポーツや格闘技のようなわかりやすさはなくとも、そこにある努力や葛藤、熱いドラマは運動部と何ら変わらない。原作者の小説家、武田綾乃さんは「響け!ユーフォニアム」でも吹奏楽部の青春を描いていたが、文化部の青春というものにものすごく造詣が深く、丁寧な描写でしっかりと伝わってくるのがとても良い。

青春とその心の葛藤や機微を劇伴で伝える

小説であれば、文章で心の中を直接書く事が出来るが、アニメは別だ。

キャラクターの表情、声の震えや息遣い、場面演出、そして劇伴で心情を表す必要がある。

そして、このアニメはそれが非常に上手い。

例えば第一話の印象的なシーン、先輩である薄頼瑞希が放送部部長として新入生に詩を読む場面で入る劇伴の、ディスコードっぽくきこえるギリギリの音程で入ってくる不穏なピアノにリバースのストリングス。そして真っ暗な場面を堂々と歩いていく先輩、主人公は足元に微かに見えているレールを踏み外す事なく、それでも先の見えない一歩を踏み出す事に怯えている。ピアノの音が力強いマイナーコードに変わっていき、メロディも少しずつハッキリしていく…という演出。しかも、それまでのシーンで劇伴を最小限しか使っていないからこそ、ここで急に流れてくる音と演出にドキッとさせられる。

それでも主人公は自分のやりたい事に大してまだ一歩を踏み出せずに帰路につき、ストーリーは進んでいくのだが、このシーンですでに心は決まってしまっていたのかもしれないなと納得させるだけの力がある。

もちろん、日常のシーンなどでも劇伴は流れるのだが、このアニメは「放送」「朗読」という同じ耳に訴えかけるモノを題材にしているからか劇伴をかなり大事に、そして演出の肝として使っているような場面が沢山あるのだ。

本来、アニメは肩の力を抜いて見るものである事に異論は無いが、こういった「伝えたい!」という意図がわかりやすいアニメを見ると、劇伴の重要性がとてもわかるし、他のアニメを見る時にも無意識で見ていた部分がよりわかるように見られるようになってくると思う。

それだけでもこのアニメは間違いなく見る価値があると言える!ぜひ。

公式サイトhttps://hanashura-anime.com/#indexより引用

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